仕事柄多くの建物(住宅)を見ます。最初はあんまり気がつかなかったのですが、住宅は古くなればなるほど(築後時間が経過すればするほど)、造りによって差が出ます。10年しか経っていないのに、「どうしてこんなに古ぼけてるの」というのと、築30年の住宅が「えーこれで30年も経ってる?せいぜい20年じゃないの」というように(実際我々は、建物に使われているサッシとか、キッチン、浴室などの住宅設備、間取りなどいろんなところから推測するので、建築年代はある程度特定できます)。そして、用材を含め造りがいい建物は、古くなったときに「直す価値がある」のがいいですね。前に書いた古民家はその最たるものでしょう。以前いたふるさと情報館の八ヶ岳事務所の中村所長が「古美る(ふるびる)」という言葉をよく使っていましたが、古くなって朽ちていくわけではなく、古くなることでより美しくなっていく。「腐る建材、発酵する建材」ということが、林望著『思い通りの家を造る』光文社新書のなかに書いてあったのですが、まったくその通りですね。さらにいうと建材を含めて、人の手(大工の腕)も含めた造りの善し悪しで「腐る家、発酵する家」の差が出てきてしまいます。そう、「発酵する家」は、長く使うことができます。一部設備など、その時代時代に一定の手を入れることにより、世代を超え引き継いでいくことが可能です。
どうしても都市の住宅は都市計画や防災、ライフスタイルの変化、そして効率の論理など等により、住宅も含め建物のスクラップアンドビルドが頻繁に行われてしまいます。その点、田舎では時間がゆっくり流れていきます。田舎に似合う家はやっぱり、「発酵する家」です。古民家は無理だとしても、造りのいい住宅を選びたいですね。それに造りがよければ、築30年も50年も変わりません。定年後60歳からに10年15年田舎暮らしをして、都会に戻るということもあるかもしれません(相続という局面でも)。住宅の価値を減少させない、また“田舎暮らし物件”としての価値という経済的な面から見てもお勧めです。
コメントする